モバイル決済の現在と未来を語る「ALIPAY DAY 2018」

大丸松坂屋、マツキヨ、PayPayらがモバイル決済の現在と未来を語る 「ALIPAY DAY 2018」開催


ECzine編集部 中村 直香[著]
 アリペイ ジャパンは、2018年9月5日に東京国際フォーラムにて、「急拡大する中国人向けインバウンドビジネス」と「キャッシュレス社会の到来」をテーマに、「ALIPAY DAY 2018」を開催した。本記事ではその様子をお届けする。


空港・デパート・アウトレットの経営トップが語る、インバウンドの現在と課題

 「竹中 平蔵氏と先行3業態トップが探る次世代インバウンド戦略」をテーマにした冒頭のセッションでは、経済学者の竹中平蔵氏をファシリテーターに、大丸松坂屋百貨店、三菱地所・サイモン、日本空港ビルデングが登壇。アリババの香山誠氏も交え、それぞれのインバウンドにおける施策と、今後の展望について議論が行われた。

右から、アリババ株式会社 代表取締役社長 CEO 香山誠氏、経済学者 竹中平蔵氏、
三菱地所・サイモン株式会社 代表取締役社長 山中拓郎氏、株式会社 大丸松坂屋百貨店 代表取締役社長 好本達也氏、
日本空港ビルデング株式会社 取締役副社長 執行役員 大西洋氏


 御殿場をはじめ、北は仙台から西は鳥栖まで、日本全国にプレミアム・アウトレットを開発、運営している三菱地所・サイモン。同社の山中拓郎氏は、売上とインバウンドによる来場者数ともに、大きく成長していることを明かした。

 特にインバウンドの来場者数は、2013年は53万人であったのに対し、2017年には179万人を超えた。国別の割合は、中国がほぼ半分の92万人で、香港、台湾、タイと続く。

 山中氏は同社の今後の課題について、下記の2点を挙げた。

「だんだんと個人旅行化が進んできたことで、インバウンドにおけるユーザーの購入パターンは大きく変わってきています。これにどうやって対応していくのか。また、まだまだインバウンドのお客様が来ていない施設もありますので、そこにはどうやって人を呼び込んでいくのか。このふたつが課題だと思っています」

 大丸松坂屋百貨店の好本達也氏は、売上推移と免税構成比の変化について説明。

「売上における免税の比率が急速に伸びてきたのは2012年から2013年にかけてですが、大きくジャンプアップしたのは2014年です。前年0.9%だった免税の割合が、一気に2.3%まで増加しました。日本に来る方が増えたというのももちろんですが、2014年に消耗品や化粧品が免税のアイテムとして加えられたことで、加速度がついてきたのだと思います。

2015年にはその比率が5%まで伸び、改めてインバウンドのパワーを実感しました。2016年には、為替の影響や、通関業務などが厳しくなったことで少し落ちますが、2017年にはシェアが7.3%となりました。2018年はまだ途中ですが、現時点ですでに8.9%と順調に伸びています」

 また同社ではインバウンドの取り組みとして、2013年11月に専任の担当者を設置。2014年には本社に専門組織を立ち上げ、免税カウンターの増席や通訳スタッフの増員など、店頭環境の整備に取り組んだ。

 2016年9月に導入したアリペイについては、「最初は化粧品の決済のみアリペイの利用が可能でしたが、全店全売り場で導入したところ、アリペイの売上高は1年で5.6倍にまで成長しました」と、その効果を説明した。

会場内には、アリペイによるキャッシュレス決済体験コーナーも設けられた


 日本空港ビルデングの大西洋氏は、日本におけるインバウンドの課題について以下のように見解を述べた。

「大きく課題はふたつあると考えています。ひとつめは、日本の決済システムです。たとえば、キャッシュを持たない中国の方が日本に来たときに、買えたいものを買えるのかという点から考えてみると、日本の決済システムはグローバルで見たときに遅れていることがわかると思います。2020年までにこのシステムをどのようにしていくか、具現化しなければなりません。

もうひとつは、我々含め、需要予測ができていないという点です。混んでいるところに対応することも必要ですが、どのように潜在化している観光客のニーズを汲んで、それをサービスとして提供していくのか、も考えることが不可欠です。日本人に対してはOne to Oneでのマーケティングができていますが、同じことをインバウンドのお客様にも行う必要があります」

売上に占めるインバウンドの割合が4年で2.5%から30%にマツキヨがアリペイを導入した理由

 マツモトキヨシホールディングスの松田崇氏は、「マツキヨの新世代クロスボーダーO2O戦略」をテーマに、アリペイの導入に至った経緯と国内のデジタル化の事例を紹介した。

株式会社マツモトキヨシホールディングス 営業統括本部 営業企画部長 松田崇氏


 マツモトキヨシホールディングスでは、国内のデジタルが関与している領域が非常に伸びているという。同社のデジタル領域の売上におけるシェアの比率は下記の通り。
 
・ECとO2Oの領域は、前年比で25%、今期もすでに23%ほど成長
・デジタルが関与している売上額は、全体の16%
・この16%を分解すると、89%がO2Oの売上で、残りの11%がECによる売上
 
 これを受けて松田氏は「デジタル化を進めていくためには、よりお客様一人ひとりとの関係の最適化を進める必要がある」とし、それを実現するための条件として、「デジタル上に接点数が確保できていること」、「顧客理解」、「お客様を動かすためのインセンティブを企業が持てているか」の3点を提示した。

「ポイントなどのインセンティブについては、従来は『購買』に対して付与するという特性でしたが、直近では『ユーザーアクション』に対してどのようなインセンティブをつけるか、という形に変わってきました。お客様を動かすためには、どのようにインセンティブを活用していくか。我々もポイントを発行していますが、ポイントの在り方自体が変化しているように感じます」

 また、オムニチャネルを進める過程におけるユーザーの購買金額の変化については、図を提示しながら言及した。

「この図では、カードメンバーの購買金額を1としたときの数字の変化を表しています。カードメンバーを1とし、それにデジタルで持てる接点を加えることで、購買金額は1.1倍になります。さらにオムニチャネルに繋がるウェブ系のサービス、それから店舗系のサービスを活用していくことで、1.2倍、1.7倍と増えていきます。最終的にチャネルを併用すると、購買金額は3.4倍にまで増加することがわかりました」

 インバウンドによる売上が大きく成長しているのも同社の特徴のひとつだろう。越境ECによる売上は、昨年と比べ1.5倍に、海外店舗の売上はおよそ2倍に伸びている。SNSなどを活用し海外との接点強化に取り組んだ結果、2014年には売上に占めるインバウンドの割合が2.5%だったのに対し、2018年度はすでに30%を超えている。

 海外市場に大きな強みを持つようになった同社は、今度どのように事業を展開していくのだろうか。アリペイの導入経緯と合わせて松田氏は説明し、セッションのまとめとした。

「日本では、お客様の情報をシングルIDで管理することができるようになったので、情報がひとつに繋がった状態でマーケティングを行うことができていますが、海外においては、個々に成長させてきたそれぞれのビジネスを繋げることができていません。今回アリペイを導入する大きな目的も、いかに海外のお客様をシングルIDで管理して、最適なマーケティングを行っていくか、という部分にあります。

また、ユーザーの面から考えると、アリペイを導入することにより、アリペイのユーザーである9億人にリーチすることが可能になる。我々がいままでリーチできているのはインバウンドとアウトバウンドあわせても400万人くらいですので、一気にお客様の規模を広げていくことができます。

アリペイの導入により、いわゆるタビマエの接点数を増やし、それによりインバウンドの売上が増える。インバウンドの売上が増えることで、リピート購入や越境ECの売上が伸びる。そんな好循環をアリペイには期待しています」

Yahoo!×ソフトバンクによる決済サービス「PayPay」その特徴とは

 イベントの最後を締めくくったのは、ソフトバンクとヤフーが折半出資で展開するPayPay。「ソフトバンク、ヤフーが仕掛けるWキャッシュレス革命 ユーザー数No.1 店舗数No.1に向けて」と題して、代表取締役社長の中山一郎氏がセッションを行った。

PayPay株式会社 代表取締役社長 中山一郎氏


 2018年秋にリリースを予定している決済サービス「PayPay」について、中山氏は特徴を説明した。

「スマホを見せてお支払いをする、そして読み込んで支払うことはもちろん、PayPay独自のアプリや、Yahoo!のトップ画面からもPayPayを利用していただくことが可能です。決済方法についても、銀行からのチャージとクレジットカードの両方に対応しています」

 また、先日発表されたアリペイとの連携についても、「PayPayに加盟いただいた店舗では、同じQRコードでアリペイが使えます。そして1年間は、アリペイの加盟店の決済手数料を無料にします」と述べ、サービスの魅力をアピール。最後に中山氏は、以下のように今後の抱負を語った。

「単に便利な決済手段を提供するというところにとどまらず、PayPayを使って豊かな生活を提供していきたい。一同そんなことを考えながらサービスの開発に勤しんでいます。皆さんがPayPayを使うことそのものを楽しんでいただけるようなサービスを、これから展開していければと思っています」
 
https://eczine.jp/article/detail/6025