アリペイのユーザー、9億人突破 電子決済サービス、約2年で倍増


アリババグループの電子決済サービス「支付宝(アリペイ)」を手掛ける●蟻金融服務(アント・フィナンシャル)はこのほど、全世界のユーザー数が9億人を超えたと発表した。2016年末に発表された支付宝のユーザー数は4億5000万人で、約2年で倍増したことになる。一方で、イプソスの報告によれば、モバイル決済ユーザーの増加率は鈍化している。中国国内ではモバイル決済市場の人口ボーナスがなくなりつつあり、市場拡大には他の決済方式のシェアを奪う必要が出てきている。(中国新聞社)

キャッシュレスの「次」へ…アリババが参入した新形態スーパーとは

アリババグループが展開するスーパー「盒馬鮮生」の店内。
来店客はスマホを使って商品の流通履歴などを確認できる=浙江省杭州
(三塚聖平撮影)


 中国社会のさまざまな領域で、ITの活用が盛んになっている。特にスマートフォンを使ったキャッシュレス決済が都市部を中心に急速に普及していることを背景に、流通や小売り、外食分野でサービスにITを取り込む動きが目立つ。技術力をテコに大手IT企業の“異業種参入”も活発になっており、中国の消費市場に変化を与えている。(三塚聖平)

 「ここはITを使った新形態の小売りを実感できる店舗です」

 中国電子商取引(EC)最大手アリババグループの広報マネジャーの趙亜楠氏が、杭州市の本社近くのビル内にあるスーパー「盒馬鮮生(フーマー・フレッシュ)」で笑顔を見せた。

 盒馬鮮生は、世界でも知名度を誇るIT企業であるアリババが展開するスーパーチェーン。ただ、店内に入ってみても、人間のスタッフに代わってロボットやドローンが働いているわけではない。果物や野菜がワゴンの上に置かれ、冷蔵陳列棚にはトレー包装された肉が並べられた普通のスーパーだ。とはいえ、店内をよく見てみると、アリババならではのITを使ったサービスが随所にあった。

宵越しの肉は売りません

 店内に並べられた商品には、バーコードやQRコードが付けられている。それをスマホのアプリで読み取ると、商品の産地や流通履歴、調理方法など詳細な情報が確認できる。中国では2008年に有害物質が混入した粉ミルクが発覚するなど、「食の安全」を揺るがすような事件が度々起こってきている。中国の消費者の間では「安全なものを食べたい」というニーズが高まっていることから、盒馬鮮生ではトレーサビリティー(生産履歴の追跡)を重視しているという。

アリババグループが展開するスーパー「盒馬鮮生」の店内。
店内で購入した商品を調理してもらい、その場で食べる
「イートイン」のスペース=浙江省杭州(三塚聖平撮影)

「中国では新鮮なものをなかなか食べることができないし、消費者は自分が選んだ食材がどれほど新鮮かということがよく分かっていない。ここでは消費者がスマホを使い、商品の産地などの情報を知ることができる」(趙氏)

 盒馬鮮生では、商品の「新鮮さ」についても重視しているという。冷蔵陳列棚でトレー包装された肉類のパッケージを見ると、「4」という数字が大きく表示されていた。これはその商品が何曜日に入荷されたのかを示すもので、「4」は木曜日(中国語で「星期4」)に入荷されたことを示しているという。パッケージには「不売隔夜肉」(宵越しの肉は売りません)とのキャッチコピーが付けられている。

 ビッグデータを仕入れに活用することで、売れ残りを最小限に抑えることができているという。趙氏は「特に日本人にはよく聞かれますが、他のスーパーよりも仕入れたものが残らないのが盒馬鮮生の特徴です」と説明する。

 そして、商品を選び終えた来店客は無人のレジに向かう。そこで自ら商品のバーコードを読み取り、スマホの決済アプリを使って支払いを済ませる。有人のレジで現金を使った支払いもできるが、ほとんどの来店客は無人レジによるキャッシュレス決済を利用しているという。

スーパー、倉庫、レストランを兼ねる

「盒馬鮮生」で売られている肉商品。
パッケージにある「4」は木曜日(中国語で「星期4」)に
入荷されたことを示している=浙江省杭州(三塚聖平撮影)


 盒馬鮮生のもう一つの特徴がアプリを使った宅配だ。店舗からおおむね3キロ圏内では「30分以内配送」をうたっている。利用者が自宅などから専用アプリで注文すると、端末で注文を確認した店舗スタッフが商品を袋に詰める。必要なものを集め終わると、それを店内の天井に張り巡らされたレールを通じて配送スペースへと送る。それを自社の配達員がバイクで届けるという流れだが、一連の作業を「30分以内」で終えるという。配送料は無料だ。

 店舗を訪れたのが夕方だったので、店内の天井を見上げるとレールにつり下げられたバッグが次から次へと姿を見せた。その下では、忙しそうにバッグに商品を詰める女性スタッフの姿が目立った。もちろんスタッフは品出しなど、一般的なスーパーで行われている業務も担当している。

 また、店内で購入した商品を調理してもらい、その場で食べる「イートイン」もある。来店客は店内のいけすで自ら選んだ魚介類を購入し、調理法や味付けなどを指定するだけだ。店内のテーブルで新鮮な海鮮料理を味わえるとあって、食事時には多くの来店客が利用しているという。

 「スーパー、倉庫、レストランの機能を兼ね備えている。経営効率も、一般のスーパーより優れている」(趙氏)

 盒馬鮮生は2016年に店舗展開を開始。中国の消費者に受け入れられているようで、今年9月現在で65店舗にまで拡大しているという。

スピードとともに問われる「質」

「盒馬鮮生」の店内。
アプリで注文を受けた商品はスタッフが袋に入れ、
店内の天井に張りめぐらされたレールを通って
配送スタッフに送られる=浙江省杭州(三塚聖平撮影)


 中国のIT企業では、EC大手の京東集団も生鮮スーパー「7FRESH(セブンフレッシュ)」の展開を今年1月に開始。京東は、5年以内に中国で1000店舗の出店を目指すとの方針を表明している。

 中国ではスマホの普及を背景に、ITを活用したサービスが猛スピードで広がっている。ただ、数年前に中国で爆発的にヒットしたシェア自転車は、過当競争で利益が上がらずに経営破綻や経営悪化が相次ぐ事態に陥っている。

 スピードでは日本を上回る中国のIT活用だが、スピードとともにサービスの「質」も問われるようになっているといえる。


https://www.sankeibiz.jp/macro/news/181205/mcb1812050500004-n1.htm