アリペイ運営のアントが「世界最大の非上場企業」評価額16兆円突破

中国のアリババ傘下の金融会社「アントフィナンシャル」は、評価額がウーバーを超えて世界最大の非上場企業になる見通しだ。


関係筋によると杭州市に本拠を置く同社は、来週にも100億ドル(約1兆900億円)の資金調達を完了し、評価額は1500億ドル(約16兆3000億円)に達する見込みだ。ウーバーの評価額は700億ドル以上とされる。

アントフィナンシャルは、来年のIPOが噂されている。政府系メディアの「中国証券報」によると、今回の資金調達ラウンドはシンガポールの政府系投資会社「GIC」が主導し、「カーライル」や「ゼネラル・アトランティック」「シルバーレイク・パートナーズ」「セコイア・キャピタル」の中国支社などが参加したという。

アントフィナンシャルは、「アリペイ(支付宝)」のほか、世界最大のオンライン投資信託「Yu’e Bao(余额宝)」を運営している。2016年に実施した前回のラウンドでは、中国政府系投資ファンドである「CIC(China Investment Corp)」などから 45億ドルを調達し、評価額は600億ドル(約6.5兆円)だった。

同社の評価額の高まりは、投資家らの期待の大きさを反映したものだ。北京本拠のコンサルタント会社「Analysys International」によると、5.5兆ドル(約600兆円)規模といわれる中国のモバイル決済市場において、アリペイの2017年第4四半期のシェアは54%と、ライバルのテンセントの38%を大幅に上回った。

アントフィナンシャルはリアル店舗でのデジタル決済導入を推進し、シェア拡大を図っている。親会社のアリババは、デジタル決済やデータアナリティクスなどの技術を駆使し、小売りセクター全体の高度化を目指している。

アントフィナンシャルは、調達資金で海外進出を加速させる予定だ。同社は、バングラデシュの送金サービス「bKash」やパキスタンの「Telenor Microfinance Bank」など、アジアの金融会社への出資を進めている。香港ではビリオネアの李嘉誠(Li Ka-shing)が率いる長江和記実業(CKハチソン・ホールディングス)との合弁事業を通じ、アリペイの普及を図っている。今後は、他のアジア地域でもモバイル決済をはじめとする金融サービスを展開する予定だ。

金融業からテック企業への変貌

一方、米国進出ではダラス本拠の送金サービス「マネーグラム(Moneygram)」を12億ドルで買収する予定だったが、米政府が個人情報の流出を懸念したため破談となった。

アントフィナンシャルは先端テクノロジーを開発し、既存の銀行に提供する事業にも力を入れている。最近では「光大銀行(China Everbright Bank)」と提携し、AIを用いたサービスやリスク管理システムの提供を開始した。この事業は将来的に大きな収益を生みことが期待できるため、評価額の向上につながる。

「この数ヶ月でアントフィナンシャルは純粋な金融企業からテクノロジー企業にシフトしている。伝統的な決済事業を展開しつつも、新しい収益源に重点を置いている」と上海に本拠を置くコンサルタント会社「Kapronasia」のZennon Kapronは話す。

こうした転換は、規制当局の懸念を和らげる効果もある。当局は、アントフィナンシャルが提供する消費者向け融資や資産管理サービスが政府系銀行から多くの資金を吸い上げ、債務が一層膨らむことで金融システムのリスクが拡大することを恐れていた。Yu’e Baoは3月時点での運用資産が2660億ドルに達したが、最近になって資金流入を抑えるために1日当たりの投資額に上限を設けた。

「アントフィナンシャルが直面している課題の一つは、規制への対応だ。テクノロジー企業へのシフトによって、既存の銀行と敵対するのではなく、協力関係にあることを当局に印象付けることができる」とKapronは指摘した。

https://forbesjapan.com/articles/detail/21349